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2020年4月28日 (火)

露呈した経済発展のビジョンの問題点

 今回のコロナ禍をリーマンショックと比較する人が多くいますが、今回は、金融システムの破綻ではなく、私たちの生活に直面する経済活動が停止して実消費が蒸発してしまい日銭で生きていた街の経済が破綻し、さらには、利益を労働者に回さず内部留保として蓄えてきた大企業においてすらも危ういという状況にあり、金融システムは、信用収縮した企業に融資して延命措置を施し、大量に雇用が失われることを阻止することくらいしかできないというところに違いがあります。

 しかも、世界中の経済活動の停止にともない石油需要が急減しているこのタイミングで、OPECプラスでの協調減産の協議が不調に終わりサウジアラビアが石油増産に踏み切ったことで、石油価格が暴落し(先物価格がマイナス価格にも陥り)、一定の均衡の中で安定が保たれてきた世界の経済バランスが崩れてきています。さらには、地球温暖化が遠因とも言われるダイポール現象が、北東アフリカから中近東、西アジアにかけてのバッタの大発生を引き起こし、食糧不足問題を深刻化させています。

 低金利政策(マイナス金利)、量的緩和政策といったマクロ経済政策の打ち手を出し尽くした日銀にとっては、金利政策の深掘りするか、国債購入、CP・社債購入を際限なく増やしていくしかなく、遅かれ早かれ先進諸国のマクロ経済政策もそうした状況に陥っていくことになります。そして、意図していないとは言え、結果的にはMMTModern Monetary Theory)の世界へと入り込んでいくことになります。

 しかし、市中にお金がいくら大量にばらまかれても、感染拡大のために工業製品の生産活動が停止し、かつ、市民の経済活動が停止して消費が蒸発して、経済が停止しているという近代経済学では経験したことの無い事態に見舞われているというのが今の状況です。賃金が低下して(早晩、非正規雇用から次第に雇用が失われて)不況に陥って物価が低下し、石油価格低下にともなって物価が下がって、早晩、デフレスパイラルに陥っていきます。その一方で、自然災害による食料不足、感染症による農産物の収量低下にともなう農産物輸出制限といった問題が多重的に深刻化すると、農産物を中心とした物価の高騰が同時に進行してスタグフレーションになる可能性もあります。

 今、経済再開への道筋が描かれようとしています。しかし、コロナ禍がどれほどのダメージを人類に及ぼすかにもよりますが、長期化してニューノーマルの社会へと変容が進んでいくとするならば、ケインズ以降の経済学が提唱してきたような金融によるマクロ経済政策、公共投資による景気刺激政策の発想のままで、本当に再開した経済の再建ができるのか疑問が残ります。また、ニューノーマルの社会が非接触型経済に向うとするならば、不特定の人が触るものを共有するシェアリングエコノミーについては制限されなければならなくなります。所有することの非経済性を回避する策としてのシェアリングエコノミーですが、日銭で回していく事業にとっては土地家屋の賃借料が重荷であり、もとをただせば、土地家屋の所有者に課税される固定資産税が経済再建の足を引っ張っていることになります。だとするならば、固定資産税の上に利益を積み上げていく所有の経済の根本原理から見直さなければなりません。さらに、パンデミックにせよ自然災害にせよ、未曽有の事態に遭遇するリスクを抱えながら日銭経済のもとで多くの人が安心して生きていけるようにするためには、ベーシックインカムの制度の導入を導入し、そのセーフティネットの上で多彩なビジネスに挑戦できるようにすることを想定しなければならないのかも知れません。

 

 

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